数学の応用問題が解けない本当の理由と、“考え方”を鍛える3つのトレーニング法

─ 計算はできるのに点が伸びない人へ ─

「公式は覚えてるし、計算もできる。でも応用問題になると手が止まる…」
「文章題になると、どの公式を使えばいいのか分からない」
「パターン練習は順調でも、少しひねられた問題になると全く歯が立たない」

このような悩みを抱える中高生は多く、保護者の方からも「うちの子は基本はできるのに、応用になると急に弱くなる」という声をよく耳にします。

その原因は、才能や努力不足ではありません。
応用問題に必要な「考え方の筋力」が育っていないだけなのです。

本記事では、数学の応用問題が解けない理由を丁寧にひも解きながら、今日から実践できる「思考トレーニング法」をご紹介します。


なぜ“応用問題”になると解けなくなるのか?

① 「覚える」勉強で止まっている

数学の初学者がまず覚えるのは、公式・定理・手順です。
もちろんそれらは必要不可欠ですが、“使い方”を考える練習をしていないと、応用問題では使いこなせません。

  • 面積の公式は言える。でも「どこに使うか」が見えない
  • 一次関数の式は作れる。でも「何をxに置けばいいか」が分からない

これはまさに、「武器の名前は知っているけど、戦い方を知らない」状態。
つまり、「知識」から「思考」への橋渡しができていないのです。


② 問題を「構造化」して読めていない

応用問題、特に文章題では「情報を整理する力」が試されます。

  • 問題文にある数字の意味
  • 登場する量とその関係性
  • 問われているゴールの位置

これらを頭の中で構造化できていないと、“読み流して終わる”ことになります。
読んだつもりでも、「何がわかっていて、何が問われているのか」が曖昧なままでは、式を立てようがありません。


③「試行錯誤」の経験値が圧倒的に少ない

応用問題とは、「すぐには解き方が浮かばない問題」のことです。
つまり、正解にたどり着くまでの“プロセス力”こそが試されているのです。

  • どこから手をつけるか
  • どんな式を立てるか仮定してみるか
  • 関係ない情報を除外するか

これらは、公式や定理とは異なり、試行錯誤によってしか養われません。
ところが、正解だけを追い求める勉強では、この“考える訓練”が抜け落ちてしまうのです。


応用問題に強くなるための“思考トレーニング”3選

応用力を伸ばすには、ただ問題をたくさん解くだけでは不十分です。
「考えるプロセス」を意識的に鍛える必要があります。
ここでは、具体的な3つのトレーニング法をご紹介します。


トレーニング①:問題の“前半だけ”を読んで仮説を立てる

応用問題の本文をすべて読む前に、「前半だけを読んで、何が問われるか予測してみる」トレーニングです。

例:

Aさんはある商品の仕入れをして、20%の利益をのせて販売しています。

この時点で、「売値=仕入れ×1.2かな?」と考える。

このように、「次に何が来るか」を先回りして考える習慣が身につくと、文章を“受け身”で読まずに“能動的”に読めるようになります。


トレーニング②:「図解」してから式を立てる

応用問題では、いきなり式にせず、“図”や“表”で可視化する”ことがとても効果的です。

  • 距離と時間の関係 → 時間軸の図
  • 比の問題 → 矢印図や線分図
  • 個数と料金の関係 → 表形式に整理

特に図や表を使うことで、「この情報は不要」「この量とこの量は対応している」という発見がしやすくなり、ミスも減ります。

思考を紙の上に“見える化”することは、応用問題攻略の第一歩です。


トレーニング③:「解答を読んで納得する」のではなく「再現」してみる

問題集の模範解答を読んで「なるほど!」と思っても、それだけでは力はつきません。
重要なのは、「自分の頭で、もう一度ゼロからその解法を再現できるか?」です。

解答を閉じて、もう一度自分で解いてみる。
それができなければ、“理解したつもり”に過ぎません。

応用問題に必要なのは、思考の順序と論理の流れを、自分で再現できる力です。


保護者ができるサポート

保護者の方にとって、「数学の応用問題にどう声をかければいいか分からない」という悩みはつきものです。

以下のような接し方が、思考力育成の支えになります。

  • 「どこから手をつけようと思ったの?」と考え方を聞いてあげる
  • 間違っても、「なぜそう考えたか」を一緒に振り返る
  • 正解したときよりも、「考え抜いたプロセス」を褒める

プロセスを評価する関わり方が、子どもの“自分で考える力”を育てます。


おわりに:数学の応用問題は「頭の使い方」を変えれば誰でも伸びる

応用問題が解けないのは、才能がないからではありません。
「考え方を訓練するステップを踏んでいないだけ」です。

公式を覚える段階から、問題を解く段階へ。
そして、正解を出すだけでなく、「どうしてそう考えるのか」を言語化できるようになったとき、応用力は確実に育っていきます。

今日紹介した3つのトレーニング──

  1. 仮説を立てる練習
  2. 図で考える練習
  3. 再現する練習

これらを日々の学習に少しずつ組み込むことで、数学の見え方が変わります。
「解けるかどうか」ではなく、「考え方を試す時間」を大切にしてみてください。
その習慣が、入試や模試だけでなく、将来の課題解決力にもつながっていくはずです。