子どもが勉強しない…親ができること、してはいけないこと

夕食後、リビングでスマホを見ながら笑っている我が子の姿。
時計の針は21時を回っている。今日も宿題は手つかず、机の上は空っぽのまま。
「早く勉強しなさい」と言いたくなる気持ちを、何度飲み込んだことでしょう。

子どもが思うように勉強しないとき、親としてどう接するべきか。
どこまで関わり、どこから距離を取るべきなのか。
この問いに「正解」はありませんが、子どものやる気を育てる“関わり方”には確かなヒントがあります。

この記事では、教育心理学と実際の指導現場での経験をもとに、「親ができること・してはいけないこと」を明確に整理していきます。


なぜ子どもは勉強しないのか?

まず最初に、なぜ子どもは“やるべき”と分かっていても、勉強に取りかかれないのでしょうか?

それは決して「怠けている」からではありません。
多くのケースにおいて、子どもの内面には以下のような要因が潜んでいます。

  • 「何から手をつけていいか分からない」混乱
  • 「どうせやっても成績は変わらない」という諦め
  • 「勉強=苦痛」という固定観念
  • 「勉強する理由がわからない」という動機の不明瞭さ

つまり、“行動しない”のではなく、“行動できない”状態なのです。
この認識を持つことが、親としての第一歩です。


親が「やってはいけないこと」

① 「早く勉強しなさい」と言う

この言葉は、家庭内で最も頻出するフレーズかもしれません。
しかし、子どもにとっては「命令」であり、“勉強=やらされるもの”という構図を強化してしまう恐れがあります。

特に思春期の子どもにとっては、「親の言葉=干渉」と受け取られ、逆効果になることも。

② 他人と比較する

「○○くんは塾で偏差値が上がったらしいよ」
「お姉ちゃんのときはもっと勉強してたよ」
こうした比較は、モチベーションを刺激するどころか、自己肯定感を下げるだけです。

勉強は「自分との勝負」であることを、子ども自身が実感できるようにサポートしましょう。

③ 怒りや不安をぶつける

「なんでやらないの?」「もう知らない!」という感情的な言葉は、親の不安の裏返しです。
ですが、子どもは「怒られた記憶」は覚えていても、「何を伝えられたか」は覚えていないもの。

“恐怖による一時的な行動”ではなく、“理解に基づく継続的な行動”こそが勉強を習慣化するカギです。


親が「できること」

① 環境を整える

人は「意志」ではなく「環境」によって動かされます。
たとえば、スマホやゲームが常に手の届く範囲にある部屋で、「集中しなさい」と言っても無理があります。

  • 机の周囲をシンプルに保つ
  • スマホは決まった時間以外は親が預かる
  • リビング学習でも構わないので、勉強に集中できる空間を作る

これだけでも、子どもの“勉強しない理由”はぐっと減ります。

② 小さな行動に目を向けて、認める

「2時間勉強した」だけが成果ではありません。
“机に座った”“教科書を開いた”“ノートに1行書いた”――これらは、すべて価値ある一歩です。

「お、今日ちょっと机に向かったね」「そのプリント、自分で始めたの?」
このような行動への肯定的な声かけが、“自分はやればできる”という感覚を育てていきます

③ 親の姿勢を見せる

子どもは、親の言葉よりも“姿”を見ています。
もし親が毎晩スマホをいじっていて「勉強しなさい」と言えば、それは矛盾そのものです。

逆に、親が本を読んだり、仕事に集中している姿を見せていれば、「学ぶことが日常にある家庭」として、子どもにも自然と学習の空気が伝わります。


やる気は“引き出す”ものではなく“湧き出す”もの

よく、「どうすれば子どものやる気を引き出せますか?」という質問をいただきます。
しかし、やる気とは外から与えるものではなく、内側から湧き出すものです。

親ができるのは、そのための「土壌」を整えることだけ。

  • 安心して失敗できること
  • 成功体験を小さく積み上げられること
  • 勉強する意味を、自分なりに考えられること

この3つの条件が整えば、やる気は自然と生まれてきます。


おわりに:親の“沈黙”も愛情のひとつ

もし、今「うちの子は何もしていない」と感じているとしても、それは「見えない準備期間」かもしれません。
思春期の子どもたちは、心の中で葛藤を抱えながら、ゆっくりと自分のペースで変化していきます。

親ができることは、“正解を与える”ことではなく、“寄り添い、見守ること”。

声をかけたくなるときこそ、深呼吸をひとつ。
信じて、待つ。
それもまた、最高の教育です。